ふるさと納税で相続税を節税!デメリットも解説
相続の発生前
最終更新日 2023/04/11
そこで、相続税専門の税理士という立場から、節税対策としての「ふるさと納税」制度について活用方法を解説します。
税金控除や返礼品がある「ふるさと納税」。つまり、お得?
納税という名前が付いていますが、「ふるさと納税」は一言で表せば「寄附制度」です。通常、納税は自分の住所地で行うものですが、「ふるさと納税」は自分の好きな自治体(都道府県、市区町村)に寄附できます。しかも、所得税や住民税の寄附金控除(税の還付または控除)が受けられ、寄附した自治体から地域の名産品が返礼品として贈られます。
なお、控除される金額は、寄附金から2,000円を引いた金額と定められています。つまり、2,000円は必ず自己負担で寄附することになります。言い換えれば、2,000円で応援したい地域を支援でき、2,000円で地域の名産品を購入できるということです。
控除を受けられる金額の上限は、ふるさと納税額、その人の年収(年間所得)や家族数によっても異なります。例えば、年収400万円・共働きの配偶者あり・子どもなしの方が、3万円分の「ふるさと納税」をしたと仮定しましょう。
30,000円-2,000円=控除される税額28,000円
この28,000円のうち、30,000円(ふるさと納税額)-2,000円×20%(所得税の税率※)=5,600円が、「ふるさと納税」をした年の所得税から控除されます。
※所得は年収から経費を差し引いた金額ですが、400万円の年収で330万円以上の年間所得と仮定しています。
所得税の税率は、以下を参照してください。
※出典:国税庁『No.2260 所得税の税率』
住民税からの控除には「基本分」と「特例分」があり、計算式が少々複雑です。基本分の計算式は(ふるさと納税額-2,000円)×10%、特例分の計算式は(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-基本分10%-所得税の税率)、もしくは(住民税所得割額)×20%となります。具体的な計算式は、お住まいの市区町村にお確かめください。
ご自分の控除額の上限を知りたい方は、総務省『ふるさと納税ポータルサイト』の税金の控除についてページから寄附金控除額を計算(シミュレーション)できるExcelシートがダウンロードできます。
確定申告不要の「ワンストップ特例制度」で「ふるさと納税」
「ふるさと納税」を行うと、寄附した自治体から「受領書」が送られてきます。「ふるさと納税」を行った翌年の3月15日までに確定申告を行い、申告書にこの「受領書」を添付します。確定申告を行うことで、所得税や住民税から控除分が減額されます。
しかし、確定申告の必要のない給与所得者の場合は、ふるさと納税の「ワンストップ特例制度」を利用することで確定申告をしなくても控除が受けられます。ただし、控除は「ふるさと納税」を行った翌年度の住民税からの全額減額となり、所得税からは控除されません。また、1月1日から12月31日の1年間で、6団体以上に「ふるさと納税」をした場合は確定申告が必要となります。
「ワンストップ特例制度」を利用する手順としては、以下の通りとなります。
ステップ1:「ふるさと納税」を行う際、寄附先の自治体に「ワンストップ特例申請書」の送付を希望する。
自治体によっては、ホームページからダウンロードできる場合もあります。また、ふるさと納税サイトの『ふるさとチョイス』や『さとふる』でもダウンロード可能です。
ステップ2:「ワンストップ特例申請書」に必要事項を記入し、下記いずれかの本人確認書類を添えて、「ふるさと納税」を行った翌年1月10日(必着)までに寄附先の自治体それぞれへ郵送する。
マイナンバーカードがある場合 | 個人番号通知カードがある場合 | どちらもない場合 |
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マイナンバーカード 表面と裏面のコピー |
表面のコピー + 以下のいずれか
・運転免許証 |
住民票の写し
+
・運転免許証 |
※申請後、寄附した年の翌年1月1日までに住所や名前などに変更があった場合は、1月10日までに申請書を提出した自治体へ「申請事項変更届出書」を提出。
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「ふるさと納税」で相続税対策したい相続人のための注意点
「ふるさと納税」をすることによって、所得税や住民税が控除されるだけではありません。実は、「ふるさと納税」は相続税の節税対策にもなるのです。
相続税の基礎控除〔3,000万円+(600万円×法定相続人の数)〕はよく知られていますが、「寄附金控除」という特例も相続税にはあります。相続税の申告期限までに、相続財産を国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人や認定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄附した場合、その寄附をした財産は相続税の対象としないというものです。特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合も、同様です。
例えば、多額の相続税を納めるより、「ふるさと納税」で災害などに遭ったあの被災地を支援したほうがいい。被相続人が遺した財産で社会貢献ができ、相続税を節税できる上、返礼品として魅力的な特産品まで受け取れるのだから。……財産分与で揉めるより、相続人同士で返礼品を分け合ったほうが平和的な解決になるかもしれません。
ただし、「ふるさと納税」を相続税対策とする場合にも、注意点があります。
相続税の申告期限までに「ふるさと納税」を完了すること
相続税の寄附金控除を受けるには、相続税の申告期限(相続発生を知った日の翌日から10ヵ月以内)までに「ふるさと納税」をして、寄附証明書を添付した相続税の申告書を提出しなければなりません。遺産分割協議が長引くと、申告期限に間に合わない場合も出てきますので、注意が必要です。
その寄附が遺言によるものではないこと
「ふるさと納税」によるその寄附行為が、あくまで相続人によるものでなければ相続税の寄附控除は受けられません。なぜなら、相続税を納付するのは、被相続人ではなく相続人だからです。もちろん、被相続人の遺志による遺贈として寄附することも可能ですが、その場合は相続人の所得税や住民税は控除されません。
返礼品が50万円超にならないこと
「ふるさと納税」の返礼品は、一時所得として課税対象となります。返礼品の総額が50万円を超えると所得額が生じてしまい、かえって所得税や住民税が増えてしまいます。
控除上限額を超えないこと
冒頭で説明した通り、控除上限額はふるさと納税額、その人の年収(年間所得)や家族数によっても異なります。控除上限額を超えてしまうと、節税対策にならず、多額の寄附を行っただけになってしまうので、予めよくシミュレーションしておきましょう。
寄附行為=支出であるのを忘れないこと
「ふるさと納税」は節税対策になるとはいえ、あくまで寄附ですから、現金を支出する行為です。生活費や必要資金は手元に確保しておくことを忘れずに。
「ふるさと納税」はシンプルな仕組みで、誰もが利用しやすいシステムです。ただし、「基礎控除などを差し引いても相続税の納税が必要なくらい高額の遺産がある場合」で、「自身の所得も高い(所得が上がるにつれ「ふるさと納税」の控除限度額も上がるので)」相続人向けの節税対策といえるでしょう。
どの節税方法にしたら良いか迷われたら、まずは相続税専門の税理士へご相談ください。当税理士事務所では、お問い合わせ・最初のご相談は無料で承っております。
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この記事の監修者
税理士岡野 雄志
相続税専門の税理士事務所代表として累計2,542件の相続税の契約実績。
専門書の執筆や取材実績多数あり。
相続税の無料相談受付中
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