へそくりも相続税の申告が必要!【妻が貯めても夫の財産となる】
相続の発生時
最終更新日 2023/04/12
今回は、夫の死亡時に妻が貯めていたへそくりを相続財産に含めなくてはならない理由や、相続税の申告をしなかった場合のリスクについて解説します。
あわせて、税金がかからない贈与方法をご紹介しますので最後までご確認ください。
へそくりとは
「へそくり」とは、人に知られずにこっそり貯めたお金のことをいいますが、一般的には“夫の稼ぎで生活費をやりくりしている妻が、そこから少しずつ内緒で貯めたお金”のことをいいます。
へそくりに相続税が課税される!?
ところで、「内緒で貯めているお金にも税金がかかる」なんてお話しを聞いたことはありませんか?
この一部分だけ聞くと驚きますよね。
正しくは、「専業主婦が夫の稼ぎから内緒で貯めたお金は、夫の死亡時に夫の財産とされるため、相続税の課税対象となる」です。
つまり、専業主婦が夫の稼ぎから内緒でお金を貯めた場合は次のようなことがいえます。
- 自分がお金のやりくりをして貯めたお金だとしても、自分の稼ぎではないお金は、自分の財産にはならない。
- 夫の死亡時にはへそくりも夫の財産として申告する義務があり、そのへそくりは相続税の課税対象となる。
これを読んで、「こっそり貯めている意味がない…!」と思われた方もいるかもしれません。
次の項からは、なぜへそくりに相続税がかかるのか、相続税がかからないためにはどうすればいいのか、もしへそくりの存在を申告しなかった場合はどうなるのかを詳しく解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。
なぜへそくりに相続税がかかるの?
相続が開始されるときはどんなときなのか
相続は、人の死亡によって自動的に開始されます。
つまり、人が亡くなると、その瞬間から財産をあげる人もらう人の意思とは関係なく相続はスタートするのです。
「うちは財産が少ないから関係ない」ということはなく、人が亡くなった際にはそのすべての人に対して相続が開始されるということです。
相続財産とされるのはどのようなものか
相続財産として引き継ぐものには以下のようなものがあります。
プラスの財産 | 不動産(土地・建物) 動産(美術品や自動車など) 現金・預貯金 有価証券 債権 借地権 知的財産権(特許権や著作権など) |
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マイナスの財産 | 借入金や買掛金(住宅ローンや未払いローンなど) 連帯債務・保障債務 損害賠償債務 税金(滞納している税金や未払いの固定資産税など) その他(治療・入院費などの医療費未払い分やクレジットカードの未払い分など) |
上の表を見て分かるように、相続財産の中に「現金・預貯金」がありますね。
へそくりは、相続財産である「現金・預貯金」に含まれるのです。
へそくりは共有財産ではないの?
共有財産とは、結婚期間中に増えた財産のことをいいます。
ならば、「へそくりは結婚期間中に増えた財産の中から貯めていたお金だし、共有財産になるわけで、夫の財産ではないのでは?」と思いますよね。
しかし、法律上は夫婦別財産を原則としているため、「夫が稼いだ財産は夫のもの」「妻が稼いだ財産は妻のもの」ということとなります。
そのため、結婚期間中に貯めたへそくりは共有財産ではありますが、そのお金の出どころが夫の稼ぎからであれば、相続時には夫の財産として申告する必要があります。ちなみに、離婚時の共有財産は夫婦で半分にして財産分与しますが、あくまでもそれは離婚時のことであって、相続では共有財産であってもそれが夫の稼いだお金であれば、夫の財産になります。
名義預金なら夫の財産にはならない?
相続では名義預金における妻名義の口座にある預貯金も、夫から入金されたお金であれば夫の財産になります。
名義預金とは、口座の名義人とその口座にお金を入金する人が異なることをいいます。
たとえば、妻名義の口座に夫が稼いだお金を入金するケースです。
この場合、夫の稼ぎであっても、妻名義の口座に入金されたお金なのだから夫の財産にはならないのでは?と思われがちですが、名義預金も相続の場合は、夫が稼いだお金は夫の財産となり、相続税の課税対象となるのです。
これまでの解説で、夫が稼いだお金は夫の財産であり、夫の死亡時には妻が貯めたへそくりも相続税の課税対象となることが分かりました。
どんなに家計のやりくりをして貯めたへそくりでも、夫の稼ぎから貯めたものであれば、夫の財産として申告しなければなりません。
では、相続税が課税されないようにするにはどうすればいいのでしょうか。
次の項で「相続税が課税されないケース」を解説します。
へそくりも、贈与を上手に活用して相続税を節税!
贈与ってなに?
贈与とは、民法によると「当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」とされています。
簡単に言うと、贈与する人:「自分の財産をあげます」受け取る人:「もらいます」というやりとりがあって成立することです。
つまり、贈与はお互いの合意がないと成立しないということです。
そして、贈与されたものに課税されるのは贈与税であることを覚えておきましょう。
贈与の金額には上限はないの?
贈与の金額には上限はありませんが、当然贈与された分だけ贈与税が課税されることになります。
では、いくらまでなら贈与税が課税されないのでしょうか。
暦年贈与なら年間110万円までは非課税になる
贈与税は、1年ごとの贈与に対して課税されることになっています。
ただし、110万円の基礎控除が設けられているため、1年間に110万円までの贈与なら贈与税が課税されることはありません。このしくみを暦年贈与といいます。
逆に、1月1日から12月31日までの1年間にもらった贈与(財産)の合計額が、110万円の基礎控除額を超えてしまったときは、その超える部分に対して贈与税が課税されることになるのです。
この仕組みを活用すれば、夫が稼いだお金であっても税金が課税されることはありません。
毎年110万円以内に収まるように夫から妻へ贈与すれば、贈与税が課税されることはなく、さらに相続時には贈与された財産は妻のものとなっているため、夫の財産として相続税が課税されることもありません。
「こっそり貯める」といった本質からは少しずれてしまうかもしれませんが、へそくりの使い道が「いざというときの備え」であるならば、夫と財産の管理を共有して、暦年贈与を活用する方が損のないお金の貯め方になるのではないでしょうか。
へそくりがある場合の相続税の申告は正直に
もし、へそくりがある場合、夫の死亡時には夫の財産にへそくりを含めて、正しく相続税の申告をしなくてはなりません。
相続税の申告が必要になるのはどんなとき?
相続税の申告が必要になるのは、夫の相続財産の額(遺産総額)が相続税の基礎控除額を超えたときです。
相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で求めます。
ただし、相続税にはさまざまな特例や控除があり、相続財産が基礎控除を超えた場合でも相続税の申告と納付をせずに済むケースもあります。
配偶者だけが利用できる相続税の非課税枠
相続税には、配偶者の税額軽減という配偶者だけが利用できる非課税枠があります。
配偶者の税額軽減の内容は以下のとおりです。
- 配偶者が取得した相続財産の額が、1億6,000万円以下であれば相続税はかからない。
- 配偶者が取得した相続財産の額が1億6,000万円を超えていたとしても、法定相続分以下であれば相続税がかからない。
つまり、配偶者であれば、相続した財産の額が1億6,000万円もしくは法定相続分のどちらか多い金額を超えなければ相続税を納めずに済むということです。
注意事項として、配偶者の税額軽減を利用した場合は、たとえ課税される相続税が0円になったとしても相続税の申告は必要です。
配偶者の税額軽減を最大限に利用することで、夫の死亡時の一次相続では相続税の負担が少なく済みますが、配偶者が亡くなった際の二次相続では配偶者の税額軽減も使えず、法定相続人はさらにひとり減るわけですから、相続税の基礎控除額も減ってしまいます。
すなわち、二次相続では一時相続の財産+元々の配偶者の財産を子が相続することになり、相続税の負担が大きくなってしまう可能性も考えられます。
一次相続の際に配偶者の税額軽減を利用するときは、先々の税負担も考慮した上で遺産を分割することが税負担を減らす節税ポイントとなります。
もし、へそくりを相続税申告時に含めなかったら?
もしへそくりを相続税申告しなかった場合はどうなるか
へそくりを夫の財産として申告しないのは脱税行為です。財産を隠蔽していたとして重加算税という非常に重い罰金が課せられる可能性があります。
税務署では、市町村などから得た情報をもとに、死亡した人に相続税が発生するかしないかを調査しています。
また、提出された申告書類も税務署の資産税課税部門により細かく精査されており、その内容が税務署の調査と違う場合には税務署から連絡が入ります。
へそくりがある場合、夫の死亡時にはへそくりの全額を夫の財産として正直に申告しましょう。
相続税の申告期限
これまでの解説で、相続税の申告の必要性が分かりましたが、さらに相続税には気をつけなくてはならないことがあります。
相続税の申告期限です。
相続税の申告期限は相続が開始されてから10カ月以内とされています。それ以上を超えた場合には延滞税が課せられます。
税理士の中でも相続税はとても複雑とされており、相続税について知識がない場合、10カ月の期限内に申告を済ませるのはとても困難なことです。
相続税のことでお困りのことがある場合は、少しでも早く相続税専門の税理士に相談しましょう。
相続税を減らせる方法って?
当事務所は、税理士が作成した相続税申告書を見直し、147億円もの過払いだった相続税を取り戻してきました。
相続税申告書の作成は、どの税理士に依頼するかで、相続税額は変わります。
特に土地を相続した場合や、居住用の宅地が相続財産に含まれる場合は注意が必要です。
当事務所に、セカンドオピニオンを依頼したお客様の申告書を拝見したところ、約8割の申告書に相続税の過払いがありました。
「会計専門の税理士」に相続税申告の依頼をしようとしている人は、「相続税専門の税理士」にアイミツをとることをお勧めしています。
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この記事の監修者
税理士岡野 雄志
相続税専門の税理士事務所代表として累計2,542件の相続税の契約実績。
専門書の執筆や取材実績多数あり。
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