「金価格が高騰」コロナ禍に強い金地金の売却と相続税評価。
相続の発生時
最終更新日 2022/06/17
8月11日に一時急落しましたが、10月に入り、安定した値動きとなっています。
今、なぜ金なのか。
コロナ禍による不況下、安全資産と言われる金が投資家に人気を集め、「金ETF」も注目されています。
そういった中、もし金を相続したら。売却方法や相続税評価についてまとめました。
金価格が高騰した理由と原因は
人類が最初に発見した金属は金と言われています。貨幣価値としての歴史も古く、遠く古代エジプト時代にまで遡るとされています。
1970年代の米ソ冷戦時代に、やはり金の価格が急騰しました。核戦争への不安から、最後に残るのは実物財産の金という考えから、積極的に金が買われたためです。この時、「有事の金」という言葉が生まれました。
新型コロナウイルス感染症が世界の国々に蔓延し、国際経済活動を停滞させる中、再び金人気が高まっています。
「有事の金」はコロナ禍にも強い?
新型コロナウイルス感染症が世界の国々に蔓延・拡大し、国際経済活動を停滞させる中、再び「有事の金」人気が高まっています。
2月半ば、世界的な株価暴落が始まり、株、債券、リートなど、3月後半まで何もかも売られる「セルオール(sell all)」の状況が続きました。そんな中、いちばん最初に値を戻したのが金です。金価格の上昇はその後も続き、8月前半には史上最高値を連日更新しました。
実物資産である金地金(金塊、インゴット、鋳塊、ゴールドバー)はもちろん、「金ETF(Exchange Traded Funds)」も注目を集めています。「金ETF」は金地金で運用する投資信託で、株式市場で投資が行えるため、投資家にはなじみやすい方法というのも人気の理由でしょう。
昔から、「金の延べ棒」と言えば富の象徴、安定資産の象徴で、今風に言えば「財産のアイコン」です。特に高齢者にとって、金地金は実体のある実物資産ですから、わかりやすい投資対象としてますます人気を誇っています。
遺産分割するため金地金を売るには
さて、そんな金地金を相続したら、まずは金の時価をチェックすることです。被相続人が購入した時の証明書や伝票を確認しましょう。購入金額が不明の場合、売却金額の5%相当額が購入金額として適用される場合があります。
しかし、証明書や伝票を紛失している場合でも、以下の方法で確認できます。
上の写真のように、金地金のバーには、地金番号、ブランド、品位(純度)、重さが刻印されています。中でも、地金番号はこの世でたった一つ、そのバーにしか与えられない管理番号です。この番号さえわかれば、証明書や伝票が見つからなくても大丈夫。購入した時の金額を調べることができます。
そして、次に調べるのが相続発生日(被相続人が亡くなったことを知った日)と今の時価です。
金地金の相場は、日本取引所グループ(JPX)や一般社団法人 日本金地金流通協会のサイト、新聞でも調べられます。大手の貴金属業者のホームページにも、相場や買取価格が掲載されています。
金地金を売却し現金化して、複数の相続人で分割する場合は、金買取専門業者や専門店に買い取ってもらいます。ほとんどの業者が無料査定してくれます。予めメールで依頼できる業者もありますので、ネットで調べて、信頼のおけそうな業者に問い合わせてみるといいでしょう。
金地金を売却した時の税金
金地金の売却金額が購入金額を上回る場合は、確定申告をして税金を支払う必要があります。金地金を売却して得た所得(地金の売却益とその他の該当する譲渡益の合計金額)には、譲渡所得が課税されます。
また、営利を目的として継続的に売買を行い、年に何回も売却益を得ている場合は、事業所得または雑所得として総合課税の対象になります。
譲渡所得の金額は、以下の方法で計算されます。
(1) 所有期間 5年以内の場合
(2) 所有期間 5年超の場合
(注) 譲渡所得の特別控除の額は、その年の金地金の譲渡益とそれ以外の総合課税の譲渡益の合計額
に対して50万円です。これらの譲渡益の合計額が50万円以下のときはその金額までしか控除できません。
また、(1)と(2)の両方の譲渡益がある場合には、特別控除額は両方合せて50万円が限度で、(1)の譲渡益から先に控除します。
※出典:国税庁『No.3161 金地金を売ったときの税金』
さらに、平成23(2011)年の税制改正により、「金地金等の譲渡の対価の支払調書制度」(所得税法第225条第1項第14号)が創設されました。
金地金等の売却代金 (支払対価)が200万円を超える場合、買取業者には売却主の本人確認書類の提出や本人確認の実施、税務署へ支払調書(売却主の住所・氏名、地金種類・数量・支払金額・支払確定日を記載)の提出が義務付けられました。
金地金そのものの分割も可能
「金地金は実物財産だから分割できない」と、思い込んでいる相続人もいらっしゃるかもしれません。実は、業者に依頼すれば、金地金そのものの分割加工(精錬加工)も可能です。金貨も同様に分割加工できます。
つまり、金地金を小分けして、相続人で実物を分け合うことができるのです。また、金地金を分割して、年間の売却による譲渡益を50万円以内に抑えれば、譲渡所得も課税されません。
ただし、相続の場合は、相続税の課税対象となります。
金地金にかかる相続税の評価方法
金地金の相続税は、相続発生日(被相続人が亡くなったことを知った日)の取引相場の価額が評価対象となります。
1g当たりの取引相場価額×重量(g)=金地金の相続税評価額
ただし、相続税は金地金単体に課されるのではなく、遺産総額に対して課税されます。ですから、ほかの遺産金額と合計した遺産総額に相続税がかかってきます。
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」なので、これ以下の金額なら、相続税の申告は必要ありません。
相続税の基礎控除や控除の種類、また贈与税については、以下のコラムもご一読ください。
「相続税申告」とは?控除の種類や必要な準備、自分で申告する方法
「配偶者の税額軽減」で相続税が無税?非課税枠や注意点をチェック
また、金以外にも財産価値のある貴金属の地金は存在します。貴金属は金(Au)・銀(Ag)に加え、白金族の6種類=プラチナ(Pt)・パラジウム(Pd)・ロジウム(Rh)・ルテニウム(Ru)・オスミウム(Os)・イリジウム(Ir)の合計8種類を指します。
金価格が高騰している昨今、金を相続としてまとめて遺すのではなく、贈与税が控除される年間110万円を目安に「生前贈与」される方も増えてまいりました。
相続税対策や生前贈与については、お一人で悩まずに、信頼できる専門家へのご相談をおすすめいたします。当税理士事務所は、相続税申告2,588件、相続税還付1,824件の豊富な経験と実績を積んでまいりました。また、ご相談・お見積までは無料で承っております。
この記事の監修者
税理士岡野 雄志
相続税専門の税理士事務所代表として累計2,542件の相続税の契約実績。
専門書の執筆や取材実績多数あり。
相続税の無料相談受付中
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