介護等の貢献に報いることができる「特別の寄与の制度」の創設
時事ニュース
最終更新日 2022/06/27
「特別の寄与の制度」の創設について解説します。
特別の寄与の制度の創設
ポイント
相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。
※2019年7月1日(月)施行
現行制度
相続人以外の者は、被相続人の介護に尽くしても、相続財産を取得することができない。
事例
亡き長男の妻が、被相続人の介護をしていた場合
被相続人が死亡した場合、相続人(長女・次男)は、被相続人の介護を全く行っていなかったとしても、相続財産を取得することができる。
他方、長男の妻はどんなに被相続人の介護に尽くしても、相続人ではないため、被相続人の死亡に際して相続採算の分与にあずかれない。
改正によるメリット
相続開始後、長男の妻は、相続人(長女・次男)に対して、金銭の請求をすることができる。
→ 介護等の貢献に報いることができ、実質的公平が図られる。
※遺産分割の手続きが過度に複雑にならないように、遺産分割は、現行法と同様、相続人(長女・次男)だけで行うこととしつつ、相続人に対する金銭請求を認めることとしたもの。
相続法の見直しの経緯
2018年(平成30年)7月に、相続法制の見直しを内容とする「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と、法務局において遺言書を補完するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。
民法には、人が死亡した場合に、その人(被相続人)の財産がどのように継承されるかなどに関する基本的なルールが定められており、この部分は「相続法」などと呼ばれています。
この相続法については、1980年(昭和55年)に改正されて以来、大きな見直しがされてきませんでした。
一方、この間、我が国における平均寿命は延び、社会の高齢化が進展するなどの社会経済の変化が生じており、今回の改正では、このような変化に対応するために、相続法に関するルールを大きく見直しています。
具体的には、
(1)被相続人の死亡により残された配偶者の生活への配慮等の観点から、
1. 配偶者居住権の創設
2. 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
(2)遺言の利用を促進し、相続をめぐる紛争を防止する観点から、
1. 自筆証書遺言の方式緩和
2. 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(遺言書保管法)
(3)その他、預貯金の払戻し制度の創設、遺留分制度の見直し、特別の寄与の制度の創設などの改正を行っています。
配偶者居住権の新設 – 平成31年の相続法改正を解説
婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置 – 平成31年の相続法改正を解説
預貯金の払戻し制度の新設 – 平成31年の相続法改正を解説
自筆証書遺言の方式緩和 – 平成31年の相続法改正を解説
法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設について – 平成31年の相続法改正を解説
遺言の活用 – 平成31年の相続法改正を解説
遺留分制度の見直し – 平成31年の相続法改正を解説
相続の効力等に関する見直し – 平成31年の相続法改正を解説
相続法についてのQ&A – 平成31年の相続法改正を解説
改正法令を施行日順に押さえよう – 平成31年の相続法改正
この記事の監修者
税理士岡野 雄志
相続税専門の税理士事務所代表として累計2,542件の相続税の契約実績。
専門書の執筆や取材実績多数あり。
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