「資産家の相続税額」とは!日本の遺産史上最高額は…?
時事ニュース
最終更新日 2022/06/20
では、トップクラスの富裕層における相続は、どうなっているのでしょう?史上最高の相続財産額と相続税額について調べてみました。
遺産総額の日本歴代最高はパナソニック創業者・松下幸之助氏
日本で史上最高の遺産総額を記録したのは、松下幸之助氏とされています。松下電器産業(現・パナソニックグループ)の創業者であり、「経営の神様」として知られる、日本を代表する経営人です。平成元(1989)年4月27日、94歳でこの世を去り、遺産総額は2,450億円でした。
遺産は、配偶者である妻・むめのさん、娘・幸子さん、娘婿・正治氏、そして4人の非嫡出子が相続しました。当時はまだ高額納税公示制度(※)があったので、認知されていた非嫡出子4人の名前も公表され、2代目社長である正治氏〔のちに会長・名誉会長/平成24(2012)年逝去〕は「プライバシーの侵害もはなはだしい。この制度は間違っている」と怒っていたとか。
※高額納税公示制度は、政府が数千万~数億円単位の高額納税者を公示する日本の制度。公示された高額納税者名簿は、一般的に「長者番付」などと呼ばれました。犯罪抑止の観点や個人情報保護法の全面施行により、平成18(2006)年〔平成17(2005)年度分〕に廃止。
相続財産の97%以上が当時の松下グループ株で、松下家の相続人は相続税を納税するため、この株を松下グループに売却しました。売却価格は、当時の時価で総額約930億円だったそうです。
また、相続税額は854 億円で、法定相続分が1/2である妻のむめのさんの相続税額は0円でした。なぜでしょう?相続税には以下のような「配偶者の税額の軽減」があるからです。
配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
(注) この制度の対象となる財産には、仮装又は隠蔽されていた財産は含まれません。
(1) 1億6千万円
(2) 配偶者の法定相続分相当額
相続税の史上最高額はブリヂストン2代目社長・石橋幹一郎氏?
相続税額トップは、当時の最高額である石橋幹一郎氏の1,035億円(参考:石橋幹一郎:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)とされています。幹一郎氏はブリヂストンの2代目社長で、会長を務めたのち、他界された平成9(1997)年当時は取締役相談役に就任されていました。幹一郎氏は創業者・石橋正二郎氏の長男で、ブリヂストンを世界的タイヤメーカーへ成長させ、日本の自動車産業をグローバルへと進展させた立役者として知られます。
遺産はブリヂストン株式5,000万株、土地、建物、美術品などで、評価総額1,646億円と伝えられています。長男・寛氏(ブリヂストン監査役・石橋財団4代目理事長)、長女・美紀子さん、次女・知子さんの3人のお子さんで相続し、こちらもまた相続税納税のために株式はブリヂストンとその関連企業へ売却されたそうです。
※相続税について詳しくは、当サイト掲載のコラム「相続税」とは?遺産や財産を相続したときにかかる税金についてもご参照ください。
相続税の史上最高額は任天堂の前社長山内博氏の可能性も!
近年、注目された国内の相続といえば、平成25(2013)年9月19日、85歳で他界された任天堂の前社長・山内溥(ひろし)氏の相続でしょう。溥氏は任天堂株式の1,416万5,000株、発行済み株式の10%を保有する筆頭株主でした。
この株式を相続したのは、長男・克仁氏(任天堂企画部長)、次男・万丈氏(ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス代表)、長女・陽子さん、次女・富二子さん。なかでも、最も注目を集めているのが、万丈氏といえるでしょう。
万丈氏は、実は溥氏の養子で、血縁関係では孫にあたります。子が存命の場合、孫は法定相続人になれませんが、養子にすることで子と同様の相続権が得られます。
相続発生当時、相続税の基礎控除額は5,000万円+1,000万円×法定相続人の数(現在は3,000万円+600万円×法定相続人の数)でしたから、相続人の数が増えることで基礎控除額も増えます。
ただし、被相続人に実の子がいる場合、法定相続人の数に含められるのは一人まで、被相続人に実の子がいない場合は二人までです。また、被相続人の養子となっている被相続人の孫は、被相続人の子が相続開始前に死亡したときや相続権を失ったためその孫が代襲して相続人となっているときを除き、相続税額の2割加算の対象になります。
溥氏から巨額の遺産を受け継いだとき、万丈氏は弱冠21歳。しかし、注目を集める理由は、それだけではありません。
任天堂といえばファミコン、スーパーマリオブラザーズ、Wii……など、ゲーム好きでなくともその名を知る人は多いことでしょう。亡くなった溥氏は「中興の祖」と呼ばれ、任天堂を世界的ゲーム機メーカーとして発展させた人物。そして、万丈氏は、その溥氏の「独創性や先見性、ユーザー思考」に根差した、経営哲学を継承する才覚の持ち主と目されているからです。
なお、溥氏の相続による山内家の相続税額は明らかにされていません。
しかし、溥氏の自宅があり、納税先となる左京税務署(京都府京都市左京区)の相続税納付税額は、相続税(大阪国税局統計情報)によると、以下のように公表されています。
平成24(2012)年:24億3,426万円
平成25(2013)年:1,324億3,788万円
平成26(2014)年:45億3,772万円
前後年と比較すると、溥氏の亡くなった年だけ相続税納付税額が約1,300億円高いことがわかります。となると、推測の域を出ませんが、山内家の相続人は約1,300億円近くの相続税を納税したのではないでしょうか。この推測が正しければ、相続税額歴代1位は山内溥氏かもしれません。
この記事の監修者
税理士岡野 雄志
相続税専門の税理士事務所代表として累計2,542件の相続税の契約実績。
専門書の執筆や取材実績多数あり。
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