「口座凍結後の預金引き出し」についてさらに詳しく解説します
相続の発生時
最終更新日 2023/04/12
当ブログでは、以下の記事で被相続人の銀行口座が凍結された際の手続きや対策について解説してきました。
上記3記事に加え、今回、口座凍結に関してさらなる有益な情報をQ&Aの質問形式でご紹介します。
口座凍結についての質問
認知症で本人の意思表示が不十分とみなされた場合
質問:
まだ被相続人が存命であるのに、認知症であるからといって銀行が勝手に本人の意思表示が不十分とみなし、口座を凍結する場合があるという話を聞きました。そのような場合、どうすれば良いでしょうか。
回答:
確かにそういうケースがあるようですね。ですが、被相続人が認知症だからと言って勝手に生前に引き出すのは違法です。
認知症のご両親などが被相続人になりそうな場合は、症状が軽いうちに遺言書を書いてもらった方が良いでしょう。公正証書遺言であれば、認知症でも効力が約束されます。信託を検討しても良いと思います。どちらにせよ、症状の軽いうちに。できれば医師に診断してもらって、遺言能力に問題ないことを証明してもらった方が確実でしょう。
認知症がひどくなる前に現金・預貯金を管理する場合
質問:
親が病気で死亡する場合、生命保険はとても有効だとはわかったのですが、認知症を発症してしまった場合、ひどくなる前に預金を引き出したり暗証番号を聞き出したり、代理人カードを発行しておく方法が大事かなと思うのですが、いかがでしょうか。
回答:
代理人カードは、被相続人の生活費等を確保する分には有効だと思います。生活費はもともと贈与税が非課税なので、代理人カードで引き出しても問題ありません。
ただ代理人カードはあくまで、「代理」なので、名義人以外が使うのはよくないです(それだと実質贈与ですから)。あまりに高額なお金を何度も引き出したり、他行や別口座へ送金していると、相続対策の一環と見なされて税務調査が入るかもしれませんね。
また、暗証番号を聞き出す、という点ですが、生前に子供が「勝手に」引き出すことは違法です。親が認知症等で意思決定能力がないにもかかわらず、その預金を使い込んでいたとみなされた場合には、他の相続人に訴えられることもあります。
どちらにせよ、あまり生前に被相続人の口座を勝手にどうにかしようとするのは、税務調査のリスクもあり、おすすめできません。きちんと贈与することが一番だと思います。
銀行口座の凍結後の手続きについて
質問:
銀行口座の凍結後の手続きはとても手間がかかると聞きました、どんな手順なのかを教えてください。
回答:
こちらも一般論ですが、基本的には遺産分割を終えた後、各書類を持って銀行に申請に向かう必要があります。この遺産分割協議と書類の準備が面倒なのです。以下が基本です。
名義人の戸籍謄本等
名義人の預金通帳及び届出印
相続人様全員の戸籍謄本
相続人様全員の印鑑証明書
等が必要になるようですが、銀行によって異なるとか。
ちなみに、公正証書遺言を残していると手続きが簡単になるようです。公正証書遺言はあらゆる面で優秀な遺言です。お金はかかりますが、弊所でもおすすめしています。
郵便貯金の権利消滅について
質問:
郵便貯金は満期後20年経つと権利が消滅するそうです。こうした口座を見つけるにはどうすればよいでしょうか。また、ゆうちょに限らず、同様に数十年経つと消滅する権利などがあれば教えてください。
回答:
銀行を含む金融機関の支店に残高証明書を請求すれば、相続が発生した日現在のその金融機関にある被相続人の全ての口座を教えてくれます。
一点、残高証明書を請求すると、金融機関が口座名義人の死亡の事実を把握して、口座が凍結されます。その点だけ注意が必要です。
残高証明書ですが、支店ごとに請求するので、そもそもどこの支店に口座があるのか分からない場合は地道に探すしかないですね。なので、生前のうちに口座の有りかを遺言書などで遺しておいた方が良いと思います。
税理士事務所として思いつく「時効」といえば、
遺留分減殺請求権(遺贈があったことを知った時から1年間)
相続放棄の権利(3ヶ月)
相続回復請求権(相続権を侵害された事実を知った時から5年間)
あたりでしょうか。詳しく必要であれば当所へご相談下さい。
この記事の監修者
税理士岡野 雄志
相続税専門の税理士事務所代表として累計2,542件の相続税の契約実績。
専門書の執筆や取材実績多数あり。
相続税の無料相談受付中
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