「仮想通貨の相続」即行やるべき手続き方法と相続税の評価方法。
相続の発生時
最終更新日 2023/04/12
仮想通貨の相続が発生!手続き方法マストステップ。
ネットバンキングやネット証券など、インターネット取り引きによる「デジタル遺産」も増えてきました(言葉は似ていますが、パソコンやクラウド上に保管されている写真やSNSアカウントなどの「デジタル遺品」とは異なります)。仮想通貨も、その「デジタル遺産」の一つです。
資金決済法(令和2(2020)年5月1日施行)の改正により、「仮想通貨」は「暗号資産」へと呼称が改められました。そのため、金融庁や国税庁では「暗号資産」という呼び方を使用しています。
日本銀行によると、「暗号資産(仮想通貨)」とは、インターネット上でやりとりできる財産的価値であり、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されています。
(1)不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
(2)電子的に記録され、移転できる
(3)法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
※出典:日本銀行 公表資料・広報活動『暗号資産(仮想通貨)とは何ですか?』
代表的なものには、ビットコインやイーサリウムなどがあります。12年程前に実用化され、一時ブームを巻き起こしましたが、今は沈静化しています。
「デジタル遺産」とは言っても、国内で取り引きされたものなら、相続手続き方法は銀行の預貯金や有価証券とほぼ同じです。
まずは仮想通貨取引所・販売所へ連絡
ステップ1:暗号資産交換業者を調べる
仮想通貨の取引所や販売所と呼ばれる、主な暗号資産交換業者は以下の通りです。相続した仮想通貨がどの業者か確かめ、仮想通貨を相続したことを連絡しましょう。なお、手続きは法定相続人が行うことになっています。
以下の暗号資産交換業者名を押下すると、公式サイトまたはサイト内の相続手続きページへ飛べます。サイトから手続きできる業者もあります。
ステップ2:暗号資産交換業者から確認内容が届く
口座の持ち主や相続について連絡した相続人ご本人の確認作業に関する内容が届きます。通常はメールで送られてきます。また、残高証明書が郵送されてくる場合もあります。
ステップ3:暗号資産交換業者が口座を凍結する
確認作業が済んだ時点で口座が凍結されます。
ステップ4:暗号資産交換業者から必要書類が通知される
相続手続きに必要な書類を知らせてくれます。通常は、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍・法定相続情報一覧図のいずれか (原本)、代表相続人の本人確認書類(コピー可)、遺言書がない場合は共同相続人同意書・相続人全員の印鑑証明書・遺産分割協議書、暗号資産(仮想通貨)売却依頼書・決済依頼書・出金依頼書・口座抹消依頼書などとなります。
ステップ5:暗号資産交換業者へ必要書類を送付
ステップ4の書類を相続人の代表者が暗号資産交換業者へ送付します。
ステップ6:暗号資産交換業者から口座への送金
暗号資産交換業者が受け取った書類内容を確認後、仮想通貨を日本円に換算して代表者の口座に送金します。仮想通貨そのものを承継するのではなく、時価で換算し、日本円で相続することになっています。
パスワード(暗証番号)がわからない場合
被相続人(亡くなった方)の口座が国内の仮想通貨取引所や販売所にあるなら、IDやパスワードがわからなくても慌てることはありません。前項のように法定相続人としての手続きをきちんと踏めば、暗号資産交換業者は方法をアドバイスしてくれます。
問題は、海外の仮想通貨取引所に口座があった場合です。海外取引所はプライベートキー(秘密鍵)が必要な場合もありますし、外国語を駆使しながらの相続手続きは、相続人にとってかなりの負担となります。
かと言って、セキュリティの観点からすると、遺言書やエンディングノートにパスワードやプライベートキーまで記載するわけにはいきません。日頃から家族間で、手掛かりとなるような会話が交わされているかどうかがポイントとなります。
誰しも自分が死亡する時は予測できませんが、「そろそろ相続について考えよう」となったら、仮想通貨は国内の取引所や販売所に移したほうが無難かもしれません。相続人のためを思うなら、現金化して生前贈与するという方法も考えられます。
仮想通貨の相続に係る税金。国税庁の評価方法は。
通常、相続の場合、仮想通貨は日本円に換算して支払われます。ですから、相続税も日本円に換算して評価されます。暗号資産交換業者が換算した金額ではなく、相続開始日(被相続人が亡くなったことを知った日)の時価で評価します。
また、日本円での換算時に利益が出ていれば、所得税の確定申告も必要です。分類は雑所得となります。
もし、被相続人が亡くなるまでの年に仮想通貨を売買したり、交換したり、あるいは仮想通貨で何かを購入していたら、準確定申告が必要な場合もあります。
相続により取得した仮想通貨の評価方法
国税庁『仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(FAQ)』の資料には、「27 相続や贈与により取得した仮想通貨の評価方法」というページがありますので、参考として以下の内容を引用します。
活発な市場が存在する仮想通貨は、相続人等の納税義務者が取引を行っている仮想通貨交換業者が公表する課税時期における取引価格によって評価します。
仮想通貨の評価方法については、評価通達に定めがないことから、評価通達5((評価方法の 定めのない財産の評価))の定めに基づき、評価通達に定める評価方法に準じて評価することとなります。
この場合、活発な市場が存在する(注1)仮想通貨については、活発な取引が行われることによって一定の相場が成立し、客観的な交換価値が明らかとなっていることから、外国通貨に準じて、相続人等の納税義務者が取引を行っている仮想通貨交換業者が公表する課税時期における取引価格(注2、3、4)によって評価します。
なお、活発な市場が存在しない仮想通貨の場合には、客観的な交換価値を示す一定の相場が成立していないため、その仮想通貨の内容や性質、取引実態等を勘案し個別に評価します(注5)。
(注)1 「活発な市場が存在する」場合とは、仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われており、継続的に価格情報が提供されている場合をいいます。
2 「仮想通貨交換業者が公表する課税時期における取引価格」には、仮想通貨交換業者が納税義務者 の求めに応じて提供する残高証明書に記載された取引価格を含みます。
3 仮想通貨交換業者(仮想通貨販売所)において、購入価格と売却価格がそれぞれ公表されている場 合には、納税義務者が仮想通貨を仮想通貨交換業者に売却する価格(売却価格)で評価して差し支えありません。
4 納税義務者が複数の仮想通貨交換業者で取引を行っている場合には、納税義務者の選択した仮想通 貨交換業者が公表する課税時期における取引価格によって評価して差し支えありません。
5 例えば、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する方法などが考えられます。
「仮想通貨交換業者が公表する課税時期における取引価格」とは、相続開始日の時価を指します。
例えば、相続財産の中にビットコインが10BTCあったとしましょう。相続開始日のビットコインの時価が1BTC=80万円とすると、評価額の計算は以下のようになります。
10BTC×80万円/BTC=800万円
デジタル遺産の相続で迷ったり悩んだりしたら
ビットコインやイーサリウムなどの仮想通貨の相続は、相続税や所得税の納税、確定申告や場合によっては準確定申告もしなければいけないなど、相続人にとっては負担を感じることが多いかもしれません。また、デジタル遺産は被相続人ご本人でないとわからないことが多いため、厄介に感じる相続人の方も多いようです。
デジタル遺産だからと言って、相続税の申告・納税は待ってくれません。相続税の申告期限は相続開始日の翌日から10ヵ月以内です。迷ったり、悩んだりしたら、抱え込まず、相続税に詳しい税理士に相談されることをおすすめします。
この記事の監修者
税理士岡野 雄志
相続税専門の税理士事務所代表として累計2,542件の相続税の契約実績。
専門書の執筆や取材実績多数あり。
相続税の無料相談受付中
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