婚姻期間が20年以上の夫婦間における「居住用不動産の贈与」
時事ニュース
最終更新日 2022/07/01
婚姻期間が20年以上の夫婦間における「居住用不動産の贈与」等に関する優遇措置について解説します。
婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
ポイント
婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住用不動産(居住用建物又はその敷地)の遺贈又は贈与がされた場合については、原則として、遺産分割における配偶者の取り分が増えることになります。
※2019年7月1日(月)施行
現行制度
贈与等を行ったとしても、原則として遺産の先渡しを受けたものとして取り扱うため、配偶者が最終的に取得する財産額は、結果的に贈与等がなかった場合と同じになる。
→ 被相続人が贈与等を行った趣旨が遺産分割の結果に反映されない。
事例
相続人:配偶者と子2名(長男と長女)
遺産:居住用不動産(持分2分の1)2,000万(評価額)・その他の財産6,000万円
配偶者に対する贈与:居住用不動産(持分2分の1)2,000万
配偶者の取り分を計算する時には、生前贈与分に関しても、相続財産とみなされるため、
(8,000万円+2,000万円)×1/2-2,000万円=3,000万円
となり、最終的な取得額は、
3,000万円+2,000万円=5,000万円
となる。
結局、贈与があった場合とそうでなかった場合とで、最終的な取得額に差異がないこととなる。
改正によるメリット
このような規定(被相続人の意思の推定規定)を設けることにより、原則として遺産の先渡しをうけたものと取り扱う必要がなくなり、配偶者は、より多くの財産を取得することができる。
→ 贈与等の趣旨に沿った遺産の分割が可能となる。
同じ事例において、生前贈与分について相続財産とみなす必要がなくなる結果、配偶者の遺産分割における取得額は、
8,000万円×1/2=4,000万円
となり、最終的な取得額は、
4,000万円+2,000万円=6,000万円
となり、贈与がなかった場合とした場合に行う遺産分割より多くの財産を最終的に取得できることとなる。
相続法の見直しの経緯
2018年(平成30年)7月に、相続法制の見直しを内容とする「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と、法務局において遺言書を補完するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。
民法には、人が死亡した場合に、その人(被相続人)の財産がどのように継承されるかなどに関する基本的なルールが定められており、この部分は「相続法」などと呼ばれています。
この相続法については、1980年(昭和55年)に改正されて以来、大きな見直しがされてきませんでした。
一方、この間、我が国における平均寿命は延び、社会の高齢化が進展するなどの社会経済の変化が生じており、今回の改正では、このような変化に対応するために、相続法に関するルールを大きく見直しています。
具体的には、
(1)被相続人の死亡により残された配偶者の生活への配慮等の観点から、
1. 配偶者居住権の創設
2. 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
(2)遺言の利用を促進し、相続をめぐる紛争を防止する観点から、
1. 自筆証書遺言の方式緩和
2. 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(遺言書保管法)
(3)その他、預貯金の払戻し制度の創設、遺留分制度の見直し、特別の寄与の制度の創設などの改正を行っています。
配偶者居住権の新設 – 平成31年の相続法改正を解説
預貯金の払戻し制度の新設 – 平成31年の相続法改正を解説
自筆証書遺言の方式緩和 – 平成31年の相続法改正を解説
法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設について – 平成31年の相続法改正を解説
遺言の活用 – 平成31年の相続法改正を解説
遺留分制度の見直し – 平成31年の相続法改正を解説
特別の寄与の制度の創設 – 平成31年の相続法改正を解説
相続の効力等に関する見直し – 平成31年の相続法改正を解説
相続法についてのQ&A – 平成31年の相続法改正を解説
改正法令を施行日順に押さえよう – 平成31年の相続法改正
この記事の監修者
税理士岡野 雄志
相続税専門の税理士事務所代表として累計2,542件の相続税の契約実績。
専門書の執筆や取材実績多数あり。
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