「相続の発生前」
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「遺言信託」とは。利用するメリットやデメリットを解説

相続の発生前

最終更新日 2023/04/06

「遺言信託」とは。仕組みや利用方法などについて詳しくまとめています。

遺言信託とは

一般に、「遺言信託」というのは信託銀行が提供するサービス商品で、遺言書の準備や保管、相続発生後の遺言執行までをパッケージ化したものをいいます。
こちらについては次項以降で詳しく述べますが、似たような言葉に「遺言による信託」があります。

遺言による信託とは、例えば相続人となる者の中に未成年者や浪費癖がある者など財産管理ができない者がいる場合、遺言によって相続財産を他の誰かに信託して(預けて)、当該財産管理ができないもののために少しずつ財産を交付するようにお願いしたりすることができる制度です。
この場合遺言者が委託者となり、財産を信託される人が受託者に、未成年者など財産の交付を受ける人は受益者という立場になります。

遺言信託の仕組みと利用の流れ

遺言信託は冒頭で述べたように信託銀行が提供する商品で、主に以下のようなサービスが受けられます。

①遺言書作成にかかるコンサルティングサービス

不備の無い、遺族に揉め事が起きないような遺言書とするための支援を信託銀行が遺言者に対して行います。

②遺言書の保管サービス

作成した遺言書が紛失しないように信託銀行が保管してくれます。
銀行によっては原則として公正証書遺言でなければならないことがありますが、その場合は公証役場から交付された正本や謄本を預かってくれます。

③遺言執行サービス

遺言者が死亡した時に、その遺言内容を実現するための遺言執行手続きを行います。
具体的な動きとしては財産調査や財産目録の作成、遺産分割協議の支援などを行います。

このように、生前中の遺言の作成について支援を受け、また必要に応じて随時相談に応じてもらうなどし、相続発生後は遺言執行の手続きを任せられるというのが遺言信託の仕組みです。
ちなみに一般の銀行と信託銀行との違いは、前者が預金や貸付、為替業務が主体となるところ、後者は顧客の資産運用がメイン業務になるという点です。

遺言信託のメリットは?

遺言信託のメリットは以下のようなものがあります。

チェック遺言の作成段階でじっくりと相談しながら実情に合った遺言内容とすることができる
チェック自身の死後の遺言執行に至るまでをトータルでサポートしてくれる
チェックサービスの提供主体が大きな法人であるので、個人の弁護士や小規模の弁護士法人などよりも将来に渡って安定的なサービス提供を受けられる

遺言信託のデメリット

デメリットとしては以下のようなものがあります。

チェック遺言執行にかかる業務としては財産に関することに限られ、子の認知や相続人の廃除の手続きをすることができない
チェック遺言書の保管料や遺言執行費用などの手数料がかかる
チェック万が一相続人同士に紛争性のある争いが生じた場合は対応を弁護士に任せなければならない

遺言信託に類似したサービスや制度

本章の主題である「遺言信託」と似たような名称のサービスや制度が他にもあるのでここで説明します。
遺言信託が遺言書の作成・保管・執行までのサポートであることを踏まえて、以下の二つのサービスと制度について見てみます。

遺言代用信託

遺言代用信託も信託銀行が提供するサービスの一つですが、その内容は遺言信託とは別物です。
遺言代用信託は委託者が生前に受託者となる信託銀行と契約を結び、財産を信託銀行に預けます。

委託者が生存中は自らを受益者とすることも可能ですが、委託者の死亡後は預けられた財産が契約に従って指定した別の受益者に交付されます。
受益者はあらかじめ契約で定めておくので、例えば妻を受益者に指定し、夫の死後に一時金を妻に交付したり、年金形式で月々一定のお金を交付することができます。
委託者が死亡するとその預金口座は凍結されてしまうので葬儀費用なども引き出せなくなりますが、遺言代用信託ではこうした事態もカバーできます。

家族信託

家族信託は信託銀行ではなく、信頼できる身近な家族を受託者として財産の管理運用を信託し、財産から得られる利益を指定された受益者が享受するものです。
例えばですが、相続財産となる予定の財産に収益物件があるが、相続人予定者の子は物件の管理ができなかったり、浪費癖があり財産管理能力に難があるなどの場合、信頼できる兄弟など他の家族と信託契約を結び当該財産を移転します。
委託者が生存中は家賃収入などの利益を受託者経由で委託者本人が(受益者として)享受し、委託者が死亡した後は別の受益者(例えば上記の財産管理能力に難のある子)に対して家賃収入が交付されるようにします。
収益物件でなくとも、現預金などの金銭を信託財産とすることもできます。
上記二つはどちらも財産の管理や運用、処分についてのサービスや制度であり、本章の主題である「遺言信託」とはその内容が異なるので、混同しないようにしましょう。

まとめ

今回は「遺言信託」を主題に、そのサービスの内容やメリット・デメリットを確認し、類似した他のサービスや制度についても触れてきました。
名前が似ているのでちょっとややこしいのが難点ですが、「『信託』の名前が付くサービスは似たようなものがいくつかあるから注意だ」ということを覚えておくだけでもだいぶ違います。
「遺言信託」は遺言の作成から死後の遺言執行までをサポートするもので、信託銀行に財産を信託するものではありませんから、この違いを理解することがポイントです。

この記事の監修者

顔写真:税理士 岡野 雄志

税理士岡野 雄志

相続税専門の税理士事務所代表として累計2,542件の相続税の契約実績。
専門書の執筆や取材実績多数あり。

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