「相続の発生時」
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相続後に確定申告が必要になる場合とは?その際の手続き方法は?

相続の発生時

最終更新日 2023/04/12

相続で取得した財産について「所得税の申告(=確定申告)も行わなければならないのでは?」と疑問に思われた方もいるのではないでしょうか?

所得税法においては、純資産を増加させる利益は全て所得と見なされるため、相続や贈与で得たものは所得となりますが、所得税法9条において、所得税と相続税の二重課税を排除しています。そのため、基本的に相続税申告を済ませたあとに確定申告の必要はありませんが、なかには確定申告が必要になるケースも。そこで今回は、相続後に確定申告が必要になるケースや、その際の手続き方法などについて解説していきます。

確定申告と相続税申告の違いについて

相続税申告書
確定申告は一定額以上の所得を得たときに「所得税」として申告・納税を行い、相続税申告は一定額以上の相続を得たときに「相続税」として申告・納税を行います。

ここではまず「確定申告」と「相続税申告」がそれぞれどんなときに必要となるか見ていきましょう。

確定申告とは?

所得税の確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得(収入から経費を引いたもの)の金額とそれに対する所得税額を計算し、翌年の2月16日~3月15日に申告します。

所得の合計金額が基礎控除の48万円(給与収入のみで103万円)以下の場合は非課税となるため申告の必要はありません。所得が48万円以上あった場合でも、扶養控除や社会保険料控除などの適用によって非課税となる場合があります。

相続税申告とは?

相続した遺産の総額が相続税の基礎控除の範囲を超えている場合、相続税申告が必要となります。

基礎控除額は、3,000万円を基本とし、相続人が増えるごとに600万円ずつ増えていきます。つまり、相続人が1人の場合は3,000万円+600万円=3,600万円。2人の場合は3,000万円+1,200万円=4,200万円となります。

相続した遺産総額が基礎控除の範囲を超えた場合は、相続税の申告期限(相続発生の翌日から10ヵ月以内)までに申告と納税を済ませます。相続した遺産総額が基礎控除の範囲内なら、相続税申告は不要です。

相続後に確定申告が必要になる場合とは?

相続により財産を取得した場合は相続税の課税対象となるため、原則として所得税の申告は必要ありません。ただし、「故人の確定申告を相続人が代わりに行う場合」や「相続人が自身の確定申告を行う場合」には、相続したあとに相続人が所得税の確定申告をしなければならない場合があります。

故人の確定申告を相続人が代わりに行う場合(準確定申告)

通常の確定申告では、本人が前年度の所得(1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得)を翌年の2月16日~3月15日に申告しますが、申告すべき人が亡くなってしまった場合には、故人に代わって相続人がこの手続きを行わなければなりません。

このように、確定申告を必要とする被相続人が、確定申告する前に亡くなってしまった場合、その年の所得税や消費税などの申告を相続人が代理することを「準確定申告」といいます。

準確定申告が必要な条件とは?

準確定申告が必要か否かは、故人(被相続人)に確定申告する義務があるか否かがポイントとなります。被相続人が次のいずれかの条件に当てはまる場合、準確定申告が必要となります。

  • 給与所得が2,000万円を超えていた場合
  • 2ヵ所以上から給料をもらっていた場合
  • 自営業者だった場合
  • 事業所得や不動産所得があった場合
  • 公的年金等の受給額が400万円を超えていた場合
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円を超えていた場合
  • 株などの有価証券や不動産を売却していた場合 など

※故人(被相続人)が給与所得や年金収入のみで源泉徴収されていた場合、準確定申告によって所得税が還付されることがあります。

準確定申告の手続きについて

準確定申告では一般の確定申告とは異なる点が多いので注意が必要です。その違いについて見ていきます。

一般の確定申告 準確定申告
提出期限 前年の所得に対し、翌年2月16日~3月15日の間に提出(提出期間は年によって異なる場合があります) 相続が発生してから4ヵ月以内に提出
提出先 本人が住民票を置いている住所の管轄税務署 故人(被相続人)の住所の管轄税務署
申告する人 本人 相続人全員(共同での連署や押印が必要となります)
保険料、医療費の所得控除の対象 1年間に支払った金額が控除の対象となります 故人(被相続人)が亡くなる当日までに支払った金額が対象となります
扶養控除や配偶者控除の対象 その年の12月31日時点での扶養の状況が対象となります 死亡日までの扶養の状況が対象となります

準確定申告における申告書の記載について

準確定申告は一般的な確定申告と同じ用紙で申告を行います。表題部分に「準確定申告」と記載のうえ、故人(被相続人)の死亡年月日を記入します。

氏名を書く欄には、故人(被相続人)の氏名と相続人の氏名を上下に連署します。相続人が複数人いる場合は、「死亡した者の確定申告書付表」に相続人全員の住所、氏名を記載・押印して申告書と一緒に提出します。

準確定申告の詳細は、【準確定申告とは】期限や手続き方法、医療費控除、還付金、納付書の書き方について解説をご覧ください。

相続人が自身の確定申告を行う場合

前述したように、相続により財産を取得した場合は相続税の課税対象となるため、原則として所得税の申告は必要ありません。
ただし次の場合には、相続後、相続人が自身の確定申告を行わなければいけない可能性があります。

  • 収入が発生する遺産を相続した場合
  • 遺産を売却した場合
  • 死亡保険金を受け取った場合

収入が発生する遺産を相続した場合

マンションや駐車場など賃貸不動産を相続し、相続後も賃貸収入として相続人の収入となる場合、所得税の確定申告を行う必要があります。

例えば、相続発生日(被相続人が亡くなった日)が、4月20日だった場合、1月1日~4月19日までの収入は被相続人のものとして準確定申告を行い、4月20日~12月31日までの収入は相続人の収入となるため翌年の申告期限までに確定申告を行います。

遺産を売却した場合

相続した不動産や有価証券などを売却して利益を得た場合、その利益には所得税がかかります。この場合、売却日の翌年の申告期限までに確定申告を行います。

その際の所得税額は、売却額から取得費と譲渡費用を差し引いた額をもとに計算します。

死亡保険金を受け取った場合

相続財産として死亡保険金を受け取った場合、保険の契約者(被保険人)、保険料の負担者、受取人が誰であるかによって「相続税」と「所得税」かに分かれます。

もし、相続人が保険料を負担していた場合、死亡保険金によって所得税が課税されるため、死亡保険金を受け取った翌年の申告期限までに確定申告を行います。

確定申告の手続きについて

自営業(個人事業主)の方にとっては、確定申告は毎年必ず行わなければならない所得税の申告です。前述のように会社員(給与所得者)の方も、相続によって「準確定申告」や、自身の所得税の申告が必定な場合には確定申告を行います。

確定申告には、「青色申告」と「白色申告」があります。

「青色申告」帳簿作業など申告作業が複雑ですが、特別控除が受けられるといったメリットがあります。いっぽうの「白色申告」は、特別控除は受けられませんが、帳簿作業など申告作業が青色申告に比べて簡単に行うことができます。

青色申告における特別控除

青色申告では、最高65万円または10万円の控除を受けられるといったメリットがあります(65万控除を受けるには、特別控除とされる55万控除の対象者が総勘定元帳を電子保存するかe-Taxで電子申告することが条件となります)。
ただし、55万円の特別控除は要件が厳しく、不動産所得の場合、アパートは10室以上、貸家は5棟以上の規模であること。10万円控除の場合、マンションの1室でも認められます。

確定申告期間と期限

1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得(売上から経費を引いたもの)の金額とそれに対する所得税額を計算し、翌年の2月16日~3月15日に申告します。

確定申告書について

用紙は管轄の税務署や国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

確定申告書には、「確定申告書A」と「確定申告書B」があり、主に会社員(給与所得者)の方は「確定申告書A」を、個人事業主の方は「確定申告書B」を使用して申告作業を行います。

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まとめ:相続後条件に当てはまる場合は、確定申告しなければいけなない

  • 相続で財産を取得した場合、原則として所得税の申告は必要ないが、なかには相続後に相続人が所得税の確定申告をしなければならない場合がある。
  • 準確定申告は相続人が行い、相続人が複数人いる場合には共同で1枚の準確定申告書を提出する(相続人全員の連署や押印が必要となる)。
  • 死亡保険金を受け取った場合、その保険料を被相続人が負担していたら「相続税」に、相続人が負担していた場合「所得税」となる。
  • 確定申告は相続人の住所を管轄する税務署に、準確定申告は故人(被相続人)の住所を管轄する税務署に提出する。

この記事の監修者

顔写真:税理士 岡野 雄志

税理士岡野 雄志

相続税専門の税理士事務所代表として累計2,542件の相続税の契約実績。
専門書の執筆や取材実績多数あり。

相続税の無料相談受付中

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