小規模宅地等の特例とは?適用される要件や必要書類を解説!
相続の発生時
最終更新日 2023/04/06
なぜかというと、小規模宅地等の特例を利用することによって、要件が合えば最大で80%相続した宅地の評価額を減額することができるからです。
しかし、小規模宅地等の特例には細かな条件が設定されており、少々見極めが難しいところがあります。
「自分が所有している宅地は適用できるのか」と判断に悩む場合は、土地の評価を得意とする相続税専門の税理士に相談するといいでしょう。
この記事では、小規模宅地等の特例が利用できる3パターンの宅地や、それぞれの適用条件、添付書類、注意すべき点などをわかりやすく解説します。
小規模宅地等の特例の内容を把握して、節税効果をあげましょう!
小規模宅地等の特例とはどんなもの?
小規模宅地等の特例とは、被相続人(故人)の自宅や事業用として使用していた宅地を相続した際、評価額を最大で80%減額できる制度のことを言います。
一定の要件を満たせば、特例を適用することが可能です。
小規模宅地等の特例がつくられた目的とは?
被相続人の自宅や事業用の宅地は、生活や収入の基盤となる財産です。
そのため、相続税の課税によって、相続人が生活や事業の基盤を失うことのないようにという目的で制定されました。
小規模宅地等の特例は大きな節税につながる
小規模宅地等の特例を利用することで、大きな節税につながります。
小規模宅地等の特例を利用した場合と利用しなかった場合を比較してみましょう。
計算例)被相続人が自宅として住んでいた特定居住用の宅地
- 自宅の敷地300㎡
- 5,000万円の自宅(宅地)と、その他財産2,000万円を子ども2人で相続した場合
【小規模宅地の特例を利用しなかった場合】
5,000万円+2,000万円>基礎控除額4,200万円
したがって、小規模宅地の特例を利用しなかった場合は相続税が発生する。
【小規模宅地の特例を利用した場合】
1,000万円(80%評価額減)+2,000万円<基礎控除額4,200万円
したがって、小規模宅地の特例を利用した場合は相続税がかからない。
このように、要件を満たしていた場合は、相続税額を大幅に抑えることができるため、小規模宅地等の特例の適用要件は必ず確認しましょう。
それでは、次の項で、適用される宅地の種類や要件について詳しく解説します。
小規模宅地等の特例の対象となる3パターンの宅地について
小規模宅地等の特例が適用される4つの宅地
小規模宅地等の特例が適用される宅地は主に以下の4つに分けられます。
- 「特定居住用宅地」…住居用に使用していた宅地
- 「特定事業用宅地」…事業用として使用していた宅地
- 「特定同族会社事業用宅地」…被相続人が所有している会社などが使用していた宅地
- 「貸付事業用宅地」…不動産貸付用として使用していた宅地
上記の4つの宅地は、それぞれ適用される土地の限度面積や減額割合が異なります。
そのほか、適用を受けるには細かな要件が設定されているため、被相続人が所有していた宅地が適用を受けられるのか見極めが難しいといった場合は、土地の評価に詳しい相続税専門の税理士に相談するといいでしょう。
小規模宅地等の特例の要件
小規模宅地の特例の要件は、特定居住用宅地、特定事業用宅地、特定同族会社事業用宅地、貸付事業用宅地の種類によって異なります。
小規模宅地の特例の要件:特定居住用宅地とされる宅地
特定居住用宅地の種類に当てはまる場合、要件が合えば評価額が80%減額となります。
特定居住用宅地(住宅として使用されていた土地)とは、以下のような土地のことを指します。
- 被相続人が住んでいた自宅の土地
- 被相続人と生計を一にする(同じ財布で生活していた)親族が住んでいた宅地
特定居住用宅地が適用される要件
特定居住用宅地が適用される要件は以下の通りです。
- 配偶者が取得した場合、無条件で適用される
- 被相続人と同居していた親族が宅地を取得した場合は、申告期限まで居住し、且つ対象の宅地を所有していること
- 配偶者も同居親族もいない場合で、持ち家のない親族(家なき子)が宅地を取得したときは、相続開始前3年以内に、自分(取得者)や配偶者名義などの家に住んだことがなく、申告期限までにその宅地を所有すること。
特定居住用宅地が適用される宅地の限度面積
330㎡
被相続人が老人ホームなどの高齢者施設に入居していて、自宅に住んでいなかった場合でも以下の要件を満たしていれば小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
- 被相続人が要介護認定・要支援認定を受け、高齢者施設に入居した場合
- 被相続人が障害者支援区分の認定を受け、障害者支援施設に入居した場合
注意:被相続人が高齢者施設に入居した後に、相続人が被相続人の自宅に居住した場合は小規模宅地等の特例の対象外となります。
小規模宅地の特例の要件:特定事業用宅地
特定事業用宅地(事業で使用されていた土地)とは、以下のような土地のことを指します。
- 被相続人や被相続人と生計を一にする親族の事業に使用していた宅地
特定事業用宅地が適用される要件
- 相続人が事業を引き継いで申告期限まで営業し、あわせて対象となる宅地を所有すること。
特定事業用宅地が適用される宅地の限度面積
400㎡
被相続人が所有している会社などが使用していた宅地も、「特定同族会社事業用宅地」として特例の対象宅地となります。
この場合は、相続人が事業を引き継いで、申告期限までに対象となる宅地を所有し、営業していることが条件です。
注意:事業内容が駐車場業(自転車駐車場も含む)や不動産貸付業の場合は、特定同族会社事業用宅地ではなく、貸付事業用宅地となります。
小規模宅地の特例の要件:貸付事業用宅地
貸付事業用宅地の要件が合えば評価額が50%減額されます。
貸付事業用宅地(不動産貸付業に使用されていた土地とは、以下のような土地のことを指します。
貸付事業用宅地とされる宅地
- 被相続人や被相続人と生計を一にする親族の不動産貸付業、駐車場業(自転車駐車場業含む)に使用していた宅地
貸付事業用宅地が適用される要件
貸付事業用宅地が適用される要件は以下の通りです。
- 相続人がその事業を引き継いで、申告期限まで営業し、あわせて対象となる宅地を所有すること。
適用される宅地の限度面積
200㎡
青空駐車場の場合は、原則更地として評価します。
駐車場として貸している土地が、整備されていないそのままの土地いわゆる青空駐車場だった場合、たとえフェンスを設置していたとしても、相続税の土地の評価の際には、「更地」として評価することになります。
特例の適用を受けるには、建物や構築物がなければなりません。
複数の宅地がある場合の特例の併用について(限度額の求め方)
被相続人が自宅として使用していた宅地と事業用として使用していた宅地の両方を所有しているなど、小規模宅地等の特例の対象となる宅地が複数ある場合は、適用の限度面積以内であれば特例の併用が可能です。
たとえば、特定居住用宅地と特定事業用宅地を所有していて特例を利用する場合は、最大730㎡の宅地で評価額を80%減額することができます。
また、貸付事業用宅地がある場合、特定居住用宅地・特定事業用宅地のそれぞれと併用するときは、各限度面積を最大限に利用できるわけではありません。限度面積の求め方は以下のとおりです。
小規模宅地等の特例の適用を受けるための必要書類一覧
小規模宅地等の特例の適用を受けるために必要とされる添付書類は以下のとおりです。
※適用には原則申告期限までに遺産分割協議が成立していることが必要です※
なお、申告期限までに遺産分割協議が成立しなかった場合は、申告期限後3年以内に遺産分割が成立した後に「更正の請求」をすることで特例の適用が受けられます。
遺産分割協議が成立している場合の必要となる添付書類
マイナンバーカード(本人確認書類)
マイナンバーカードがある | 表裏の両面をコピーしたもの |
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マイナンバーカードがない | ・番号を確認する書類として、マイナンバーが記載された住民票の写し、または通知カード写し ・身元を確認する書類として、運転免許証・身体障害者手帳・パスポート・在留カード・公的医療保険等の写しのいずれか1つ。 |
共通必要書類
★はいずれか一方でよい
添付書類 | 備考 |
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★被相続人のすべての相続人を明らかにする戸籍謄本(写し可) | 相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの |
★法定相続情報一覧図の写し | ・子の続柄が実子または養子のいずれであるかが分かるように記載されたもの ・養子がいる場合は、その養子の戸籍謄本または抄本の提出も必要 |
遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し | |
すべての相続人の印鑑証明書(※原本) | 遺産分割協議書に押印したもの |
住民票の写し(無くても可) |
※特定居住用宅地の添付書類(誰が相続するかによって添付書類が異なります)
相続人が配偶者や同居の親族の場合
上記の必ず準備する書類以外に必要とされる添付書類はありません。
相続人が同居していない親族(家なき子)の場合
添付書類 | 備考 |
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相続開始前3年以内に、相続する本人および本人の配偶者が所有する家屋に居住したことがないことを証明する書類。 | 例) 相続する家屋の登記簿謄本 借家の賃貸借契約書 戸籍の附票 |
被相続人が老人ホームなどの施設に入居していた場合
添付書類 | 備考 |
---|---|
被相続人の戸籍の附票の写し | 相続開始日以後に作成されたもの |
要介護認定・要支援認定・障害サービス受給証など | |
介護保険の被保険者証の写し | |
施設入居時の契約書の写しなど |
※特定事業用宅地の添付書類
添付書類 | 備考 |
---|---|
総務大臣が交付した証明書 |
日本郵便に貸し付けられている、郵便局舎の敷地に使用されている土地に特例を受ける場合
なお、特定同族会社事業用宅地の適用を受ける場合は、会社定款の写し、会社の発行済株式総数、出資の総額が分かる書類の添付が必要です。
※貸付事業用宅地の添付書類
添付書類 | 備考 |
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平成30年4月1日以降に相続や遺贈を機に取得した宅地がある場合は、貸付事業用宅地等が相続開始前3年を超えて特定貸付業を営んでいたことを明らかにする書類。 |
遺産分割協議が成立していない場合の、小規模宅地の特例に必要となる添付書類
申告期限までに遺産分割協議が成立しなかった場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、小規模宅地等の特例の適用がないものとみなして一旦法定相続分で算出した申告と納税を行います。
小規模宅地等の特例を利用した場合は、たとえ相続税が0円になったとしても、申告期限内に相続税の申告書を提出する必要があります。
相続税の申告期限は相続開始から10か月です。申告書の提出がない場合は、特例は適用外となるので気をつけましょう。
相続税の申告は岡野雄志税理士事務所にお任せください
小規模宅地等の特例について、理解は深まったでしょうか。
適用の要件とされるものは少々細かいため、見極めが難しいケースもありますが、要件に当てはまっている場合は大きな節税となります。
「自分が相続した宅地は適用できるのか」と判断が難しい場合は、確実に特例を利用できるよう、相続税を専門としている税理士に相談することをおすすめします。
岡野雄志税理士事務所では、創業以来17年間相続税を専門にあつかっており、高い知識と豊富な実績により、各種専門家やご利用いただいたみなさまから厚い信頼をお寄せいただいております。
実際、岡野雄志税理士事務所では過去1,700件以上の相続税の申告書を見直してきましたが、その70%~80%の申告書で土地の評価に誤りを見つけ、適正に見直すことで累計142億円の納めすぎた相続税を取り戻してきました。
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この記事の監修者
税理士岡野 雄志
相続税専門の税理士事務所代表として累計2,542件の相続税の契約実績。
専門書の執筆や取材実績多数あり。
相続税の無料相談受付中
岡野雄志税理士事務所は、ご相談やご契約の99%以上が相続税の国内でも数少ない相続税を専門に取り扱う税理士事務所です。
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